お豆腐屋さんのラッパの音を耳にして
とっくりのセーターに、かっぽう着姿。
つっかけ履いて鍋を手に小走りをする母。
「絹ひとつ、お願いね」
自転車の荷台には木の箱が二段あり
下の段には水を入れてあって
その水の中にはお豆腐。
上の段には油揚げや厚揚げが並んでいたっけ。
お勝手には
かつを節を削る木の箱があって
その木の箱には
まるで木の棒みたいなかつを節が入っていて
それを削るとき
うまい具合の角度で削れないと叱られた。
堀ごたつの横には
やかんの載った火鉢と
魔法瓶と急須
それに茶筒と湯のみがあって
食事の前に
みんなのお箸を並べるのは
まだ小さかった私の仕事だった。
いつだったか息子に
「魔法瓶もってきて」と
そう言ったら
何か楽しそうな顔をして
周囲をキョロキョロし始めた。
魔法ビン~♪
『【魔法のビン】
それはきっと、ステキなモノに違いない』
そんな思考が頭の中をグルグルまわり
ワクワクしながらモノ探しをする息子は可愛かった。
お湯も沸いたところで
「ポットのコトよ。魔法瓶って」と言う。
実は
お母さんは魔法使いで
これにお湯をいれて呪文を唱えると
お水みたいに冷たくはならないのよ
そう言ってみようかとも思ったけれど
そうするには
息子はチョットお兄さんだったし
何と言っても、既にポットを知っていた(笑)。
ま。
言ったら言ったで
ニヤニヤしながら聞いてくれたかも知れないね。
………。
最近、とんと耳にしていないな。
お豆腐屋さんのパァ~プゥ~。
では、また。でございます。tomo